キューサイ株式会社(社長:長谷川 常雄、本社:福岡市)は、福岡大学(藤岡 稔大 薬学部助教授)と、青汁の原料・緑黄色野菜ケールの抗糖尿病効果を検討しました。その結果、ケール抽出物が①マウスにおいては血糖値の上昇抑制効果があること、②インスリンの働きを改善し、血液から脂肪細胞への糖の取込み量を増大させること、を確認しました。この研究結果は、本日3月29日「日本薬学会第126年会」(会場:仙台市せんだいメディアテーク、http://nenkai.pharm.or.jp/126/)で、「ケールの糖尿病に対する作用について」として発表しました。
青汁の原料である緑黄色野菜ケール中の抗糖尿病成分を探索するため、マウスおよびマウス由来前駆脂肪細胞を用いて検討を行いました。
研究①:マウスを用いた検討
ケール抽出物を2週間経口投与後、ブドウ糖を経口投与し、定期的に血糖値を測定しました。
研究②:前駆脂肪細胞を用いた検討
ケール抽出物を添加した分化誘導培地で前駆脂肪細胞を培養後、通常培地に戻し、前駆脂肪細胞分化誘導作用、脂肪細胞からのアディポネクチン分泌量、脂肪細胞への糖取り込み量を測定しました。
研究①:マウスを用いた検討
ケール抽出物がマウスの血糖値上昇を抑制
ケール抽出物、シグリチゾン、溶媒(1%Tween 水溶液)をマウスに2週間投与した後、グルコース(ブドウ糖)負荷試験を行いました。コントロール(研究対照)として、2週間溶媒を投与した後に精製水を投与したマウスを用いました。2週間溶媒を投与したマウスと比べて、ケール抽出物を投与したマウスはシグリチゾンと同等に血糖値の上昇を抑制し、また速やかに低下させることが分かりました。
研究②:前駆脂肪細胞を用いた検討
1)ケール抽出物が前駆脂肪細胞の分化を促進分化誘導された脂肪細胞を染色したものが下の写真です。培地のみの培養と比べ、ケール抽出物添加培地の方が明らかに細胞数が多くなっており、抗糖尿病薬と同じ働きをするシグリチゾンと同等に前駆脂肪細胞の分化が促進されていることが分かります。
2)ケール抽出物が脂肪細胞へのブドウ糖の取込み量を増大
ケール抽出物を添加し、分化誘導された脂肪細胞を実験キット(Quantikine○RMouse Adiponectin / Acrp30Immunoassay )で処理すると、抗糖尿病薬シグリチゾンと同等に脂肪細胞からのアディポネクチン(インスリン抵抗性を改善する生理活性物質)分泌量が増大していることが分かりました。また、ケール抽出物を添加後、分化誘導された脂肪細胞を試薬(2-deoxy-D-[1-3H]glucose)で処理すると、シグリチゾンと同等に脂肪細胞への糖の取り込み量が増大していることが分かりました。(下図グラフご参照)
ケールには抗糖尿病薬と同じ働きを持つシグリチゾンと同様に血糖値を低下させる働きがあることが明らかになりました。したがって、ケールを原料とする青汁を摂取し続けることにより、糖尿病の予防または改善効果が期待できます。
In vivo(研究①)では、対照群に比べ、速やかに血糖値が低下しました。In vitro(研究②)では、脂肪細胞分化誘導作用、脂肪細胞への糖取り込み量、脂肪細胞からのアディポネクチン分泌量の全てが増大しました。このことから、ケールがアディポネクチンの分泌を促進することによって、インスリン感受性を増大させることがわかりました。本研究の結果から、ケールにはインスリン抵抗性糖尿病を改善させる可能性があることが示唆されました。今後、糖尿病モデル動物を用いて更なる研究を進めていく予定です。