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キューサイと福岡大学が研究「青汁の国産原料ケールは糖尿病を改善する」

キューサイ株式会社(社長:藤野 孝、本社:福岡市)は、福岡大学(藤岡 稔大 薬学部教授)と、青汁の国産原料ケールの糖尿病改善作用に関する基礎的検討を行いました。
その結果、ケール抽出物が 1)血糖降下作用のあるチアゾリジン誘導体と同様に、脂肪細胞(※2)分化誘導やアディポネクチン(※3)分泌を促進すること 2)Ⅱ型糖尿病モデルマウス(※4)においては、血糖値を降下させる作用があることを確認しました。
この研究結果は、3月26日「日本薬学会第128年会」(会場:パシフィコ横浜、http:/nenkai.pharm.or.jp/128/)で、2003年より4年間の研究結果をまとめ 「ケールの糖尿病におよぼす影響」として発表しました。

今後について

今後はケール抽出物中の関与成分の特定を行います。ケール抽出物に含まれる抗糖尿病作用を有する成分を特定し、構造を明らかにしていく予定です。

研究の目的

青汁の原料である緑黄色野菜ケールには、糖尿病改善等、様々な効能があると言われていますが、その作用の科学的根拠は未だ明らかになっていません。そこで、ケール抽出物を使い、糖尿病改善等に有効な脂肪細胞分化誘導やアディポネクチン分泌を促進することとその有効成分を明らにし、Ⅱ型糖尿病モデルマウスを用いてケールの糖尿病改善作用に関する基礎的検討を行いました。

研究の方法

研究1:前駆脂肪細胞(※5)を用いた検討
ケール抽出物を添加した分化誘導培地で前駆脂肪細胞を培養後、通常培地に戻し、1) 前駆脂肪細胞分化誘導作用 2) 脂肪細胞からのアディポネクチン分泌量 3) 脂肪細胞への糖取り込み量 を測定しました。

研究2:マウスを用いた検討
糖尿病モデルマウスに水、飼料を自由に摂取できる環境下で、ケール抽出物を3週間経口投与後、血糖値とアディポネクチン濃度を測定しました。

研究内容の概略図

研究の結果

研究1:前駆脂肪細胞を用いた検討
1)ケール抽出物が前駆脂肪細胞の分化を促進
分化誘導された脂肪細胞内に蓄積された脂肪球を染色したものが下の写真です。脂肪球が多いほど、分化誘導された脂肪細胞数が多いと言えます。培地のみの培養と比べ、ケール抽出物添加培地の方が明らかに脂肪細胞数が多くなっており、抗糖尿病薬と同じインスリン抵抗性(※8) 改善作用を示すシグリチゾン(※9) と同様に前駆脂肪細胞の分化が促進されていることが分かります。

2)インスリン感受性ホルモンの分泌量増大
ケール抽出物は、シグリチゾンと同様に、分化誘導された脂肪細胞からの アディポネクチン (インスリン抵抗性を改善する生理活性物質(※10)) 分泌量を増大 させることが分かりました。(下図グラフご参照)

3)ケール抽出物が脂肪細胞へのブドウ糖の取込み量を増大
ケール抽出物は、シグリチゾンと同様に分化誘導された 脂肪細胞への糖の取り込み量を増大 させることが分かりました。(下図グラフご参照)

研究2:マウスを用いた検討
ケール抽出物がマウスの血糖値を降下させる作用を確認
水、飼料は自由に摂取できる環境下において、Ⅱ型糖尿病モデルマウスを3群に分け、1%Tween20 水溶液で30mg、100mg/体重1kgとなるように調製したケール抽出物を3週間投与した後、血糖値を測定しました。投与開始1日目の血糖値と比べ3週間ケール抽出物を投与したマウスの血糖値は下がっていることが確認できました。

血糖値降下作用のあるケール抽出物の濃度を上げるほど、血糖値が低下することが、Ⅱ型糖尿病モデルマウスによる実験で確認されました。

研究のまとめ

ケールには抗糖尿病薬と同じ働きを持つシグリチゾンと同様に血糖値を低下させる働きがあることが明らかになりました。また、Ⅱ型糖尿病モデルマウスを用いた検討により、糖尿病の改善に効果があることが明らかになりました。

福岡大学 藤岡 稔大 教授のコメント

今回の研究により、糖尿病モデルマウスに対して、糖尿病の改善に効果があることがわかりました。今後は、ケール抽出物に含まれる抗糖尿病作用を有する成分を単離し、構造を明らかにしていく予定です。

用語解説

※1. 糖尿病
インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を特徴とする病気。原因の違いによって、Ⅰ型とⅡ型に分けられる。
※2. 脂肪細胞
脂肪を貯えたり、分解したり脂質代謝が活発に行われている。また、糖代謝も行う。
※3. アディポネクチン
脂肪細胞から分泌されるサイトカイン(生理活性物質)。インスリン抵抗性を改善する。
※4. Ⅱ型糖尿病モデルマウス
本実験では、遺伝的にⅡ型糖尿病を発症するマウスを使用した。
※5. 前駆脂肪細胞
分化、成熟する前段階の脂肪細胞。分化して脂肪細胞になってから代謝機能を発揮する。
※6. 分化
細胞が成熟して機能を持った状態になること。
※7. インスリン感受性
分泌されたインスリンが正常に作用していること。
※8. インスリン抵抗性
インスリンが充分分泌されているにも関わらず、うまく作用していないこと。Ⅱ型糖尿病の原因の一つ。
※9. シグリチゾン
抗糖尿病薬である塩酸チオグリタゾンと同様のチアゾリジンジオン誘導体である。同じ働きをするため、抗糖尿病作用のポジティブコントロールとして用いられる。インスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮する。
※10. 生理活性物質
わずかな量で身体の動きを調節する作用をもった物質。
※11. Ⅱ型糖尿病
複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレス、加齢などの環境因子が加わって発症する。40歳以上に多いが、最近は若年も増加している。
※12. インスリン
膵臓で合成、分泌されるホルモン。生体内に存在する唯一の血糖降下作用を持つ物質。脂肪組織では、糖の取込みおよび利用促進などの作用を持つ。

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