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ノコギリヤシ果実エキスの排尿障害改善作用は主成分の脂肪酸が関与することを解明

静岡県立大学薬学部・山田 静雄教授と健康食品等を製造・販売するキューサイ株式会社(本社:福岡市中央区、社長:藤野 孝)は、9月17日福井県福井市で開かれた「第18 回日本排尿機能学会」において、ノコギリヤシ果実エキスの排尿障害改善作用は主成分の脂肪酸が関与する、と発表しました。

・学会名:第18回 日本排尿機能学会(http://nbs18.umin.jp/index.html)
・会 長:横山 修 福井大学医学部器官制御医学泌尿器科学講座
・会 場:ホテルフジタ福井(福井県福井市)
・発表日:2011年9月17日(土)
・演 題:「ノコギリヤシ果実エキス および含有脂肪酸の排尿機能に対する薬理作用」

研究の背景

ノコギリヤシ果実エキスは、欧州では前立腺肥大に伴う排尿障害治療薬として、また米国や日本では健康食品として知られています。静岡県立大学・山田教授とキューサイは 2007年から研究をはじめ、ノコギリヤシ果実エキスに排尿障害改善作用があることを報告しています。

研究の目的

本研究では、頻尿症状がでやすい病態のモデルラットにノコギリヤシ果実エキスを投与して排尿機能 尿機能に対する薬理作用を調べるとともに、ノコギリヤシ果実エキスとその主成分である脂肪酸(オレイン酸およびミリスチン酸)の混合物を反復投与してその薬理作用を精査しました。

研究の方法

1)ラットにノコギリヤシ果実エキス(3-180mg/kg)を単回経口投与し、1 時間後に精製水(30ml/kg)を経口投与しました。その後、膀胱内圧および排尿量などを測定しました。

2) ラットにノコギリヤシ果実エキスと脂肪酸(オレイン酸とミリスチン酸)の混合物を2ヵ月間反復投与し、排尿量などを測定しました。

研究結果


1) ノコギリヤシ果実エキス(上記グラフ「SPE」)の単回投与により、ラットの排尿回数が用量依存的に減少し、一回排尿量および排尿速度が増加しました。(同「Vehicle」:試薬を投与していないコントロール群)


2) ノコギリヤシ果実エキス(上記グラフ「SPE」)と脂肪酸混合物(同「FA」)の反復投与により、ラットの一回排尿量が増加しました。

研究のまとめ

ノコギリヤシ果実エキスの排尿障害改善作用は、主成分である複数の脂肪酸が作用することで、排尿障害を改善することが示されました。

静岡県立大学薬学部 山田 静雄教授のコメント

私たちは、これまでの研究において、ノコギリヤシ果実エキスに、排尿障害改善作用があり、そのメカニズムは膀胱や前立腺に存在する排尿を調節する受容体へ作用することによるものであることを明らかにしてきました。また、そのエキスに含有される脂肪酸がそれらの受容体へ作用することを確認し、各脂肪酸を混合することにより相乗作用が見られることを明らかにしました。今回は、頻尿症状がでやすい病態のラットを用いて、排尿障害に対する改善作用を精査しました。
その結果、ノコギリヤシ果実エキスの経口投与により、排尿回数の減少、一回排尿量と排尿速度の増加が認められ、頻尿症状が改善されることを確認しました。また、ノコギリヤシ果実エキスに含まれる脂肪酸の混合物を反復投与することによっても、ノコギリヤシ果実エキスの投与の場合と同様な薬理作用が見られました。
これらの結果から、ノコギリヤシ果実エキスは、排尿を調節する受容体への薬理学的作用により、頻尿改善作用を示すことが示唆されました。その作用は、主としてノコギリヤシ果実エキスに含まれる脂肪酸の相乗作用によることが考えられました。
今回の結果は、ノコギリヤシ果実エキスの新たな薬理作用を示すもので、今後、臨床試験により、ヒトでの有効性が実証されるものと期待しています。

用語解説
・受容体:細胞に存在するタンパク質で、薬剤や体内で分泌されたホルモンが結合することで細胞に機能的な変化や反応を引き出す役割りを持っている。

 

静岡県立大学薬学部 山田 静雄教授のノコギリヤシに関する主な研究発表

2004年
日本薬学会第124年会にて学会発表
第92回日本泌尿器科学会総会・第25回日本臨床薬理学会年会にて学会発表
2005年
日本薬学会第125年会・第93回日本泌尿器科学会総会にて学会発表
また、Journal of Urology・日本排尿機能学会誌にて論文掲載
2006年
第60回日本栄養・食糧学会にて学会発表
2007年
第94回日本泌尿器科学会総会・第14回日本排尿機能学会にて学会発表
日本補完代替医療学会誌・Urology にて論文掲載
キューサイと共同研究を開始
2008年
日本薬学会第128年会にて学会発表
第15回日本排尿機能学会にて学会発表
2009年
Analytical Science(日本分析化学会発行:分析化学 第25巻)に論文掲載
Biological& Pharmaceutical Bulletin(社団法人 日本薬学会発行:生物系薬学学術誌 第 32 巻)に論文掲載
Acta Pharmacological Sinica 30 巻に論文掲載
第16回日本排尿機能学会にて学会発表
2011年
Alomatop20巻に論文掲載
第13回応用薬理シンポジウムにて学会発表
第18回日本排尿機能学会にてキューサイと学会発表

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