飽食の時代といわれて久しい現代の日本ですが、たんぱく質の摂取量は21世紀に入ってから急激に減少しています。1970年代から1990年代は80g前後の摂取量を維持しており、日本人の平均寿命が世界一に上り詰めたのはちょうどその頃です。しかし、2011年には67.0g、2017年には少し伸びたものの69.4gと、最も多いときと比較して約15gも低下。まだ戦後といっても良さそうな1950年代と同じレベルにまで減ってしまいました。その背景にあるのは、痩せ志向の高まりで肉類を避けるようなダイエットをする人が多くなったこと、安価・手軽で炭水化物が豊富なインスタント食品が広く普及したことなどが考えられます。
※昭和21年から昭和23年は都市部の数値を使用
「国民健康・栄養調査」厚生労働省
たんぱく質の摂取量は1日単位だけではなく1食単位でも考え、毎食しっかり摂ることも大切です。私たちの皮膚や筋肉、すべての細胞は、合成と分解を繰り返しており、そのためにたんぱく質は絶えず必要とされています。しかも、たんぱく質摂取による筋肉合成には上限があるため、一度に十分な量を超えて摂っても合成が続くわけではありません。たんぱく質の食べ溜めはできないので、朝食でのたんぱく質摂取はとりわけ重要です。
なぜなら朝目覚めた時には、夕食後から長時間にわたってたんぱく質を摂取していない状態のため、朝食でたんぱく質を補給しないことには、筋肉の分解ばかりが進んでしまうのです。朝・昼食は控えめで、夕食はたっぷり食べる日本人の食生活のスタイルでは、筋肉量低下のリスクが生じやすいといえます。
※近年は、各食事で約20〜35gまたは0.40g/kg体重を摂取すると、最大の筋肉合成反応促進が示唆されている
Ishikawa TK et al. (2018). Geriatr Gerontol Int.
美と健康にたんぱく質が重要な役割を果たすことが、多くの人たちに知られるようになってきました。特に、情報感度の高い女性の半数以上が普段の食事で意識的に摂るようにしています。
(CHAPTER 1参照)
さらに「摂らなきゃ!」という思いが強いせいか、感度の高い女性の約7割が「たんぱく質の摂取は大変だと思う/どちらかというと大変だと思う」と感じていることが調査で明らかになりました。
また情報感度が高くない女性も含めて、たんぱく質摂取が大変だと思う理由を尋ねると、1位・2位を占めたのは、量や種類を摂ろうとすると「脂質やカロリーが気になる」「食べ過ぎてしまう」という答えです。
たんぱく質が豊富な食材に、脂質やコレステロールなどが多い場合もあるので、そこを気にする方がかなりいることがうかがえます。
「たんぱく質に関する実態調査(2019) 」キューサイ
「たんぱく質」を表す英語「プロテイン(Protein)」は、"第一の"を意味するギリシャ語「プロテウス」が由来の言葉です。この語源が示すように、たんぱく質は重要な栄養素で、健康はもちろん、美容にも欠かせません。
世界の三大美女に数えられる小野小町も、その美貌を保つために、たんぱく源として鯉料理や熊の掌を食していたのだとか。