筋肉量は、健常な人でも男女ともに20代をピークに年々減っていきます。女性の場合、50代前後から筋肉量が急降下する傾向がみられます。
最近になって女性ホルモンの分泌量減少が筋力低下の要因の1つと考えられるようになってきました。※
年代別に筋肉量を比較した研究によると、女性の20歳前後と50歳前後では、50歳前後の方が平均体重が重いにもかかわらず、下肢筋肉量は約1.7kgも少ないことがわかりました。これは20歳前後の女性と比べて下肢筋肉が11.7%も減少していることを意味します。
また、全身の筋肉量は50歳前後で急激に下降しています。まさにアラフィフは筋肉の曲がり角世代といえそうです。
※谷本芳美ら.(2010).日老医誌.
※値の表示は平均± 標準偏差
谷本芳美ら.(2010).日老医誌.
筋肉は絶えず合成と分解を繰り返しています。合成を刺激するたんぱく質の摂取や運動をしないときには、年齢による合成・分解速度の差はほとんどありません。
しかし研究によって、同じ量のたんぱく質を30代と60代が摂っても、60代の方が筋たんぱく質の合成反応が低くなることが確認されました。
つまり、年齢を重ねた世代は、若い世代よりも多くのたんぱく質を摂取しなければ、筋肉を増やすのが難しいということです。そればかりか、筋肉のロス(消失)に歯止めが効かない可能性もあります。
Katsanos CS et al.(2005). Am J ClinNutr.
たんぱく質は、消化・吸収されることで、はじめて体内で活用されるようになります。この消化・吸収がうまくいかなければ、たとえ十分な量のたんぱく質を摂取していたとしても、たんぱく質不足に陥ります。
50歳前後になると、消化酵素の活性が急激に減少することがわかっています。つまり、若い頃と同じ量のたんぱく質を同じように摂取していても、体内でうまく活用されない可能性があるのです。
これを改善するには、若い頃よりもたくさんの量を摂取することが大切です。また、体内での消化を助けるために、しっかり噛んで食べることを心がけましょう。
「食生活と栄養の百科事典」中村丁次編集、丸善出版
たんぱく質の働きを知ると、たくさん摂りたくなってきますが、たんぱく質は摂れば摂るほど身体に良いものなのでしょうか。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 (2015年版)」に、たんぱく質の耐容上限量は設定されていません。それは、たんぱく質の過剰摂取によって生じる健康障害が報告されていないためです。
しかし、摂り過ぎれば、その分のアミノ酸が脂肪に変わったり、骨粗しょう症のリスクが高まるなど、身体に悪影響を及ぼす可能性があるといわれています。なにごとも、過ぎたるは及ばざるがごとし。腎臓が悪い人は特にたんぱく質の過剰摂取はいけませんが、健康な人でもバランス良く適量を摂取するのが一番です。