20代~50代の女性は、たんぱく質をどういった食品から摂るようにしているのでしょうか。
調査によると、「肉・魚・卵・牛乳などの動物性たんぱく質」が最も多く28.5%で、植物性も動物性も「どちらも積極的に摂るようにしている」人も24.3%に上りました。一方で、26.7%が「特に意識していない」と回答しています。つまり、4人に1人はたんぱく質の種類を意識していないというわけです。
たんぱく質とひとくくりにしていますが、植物性たんぱく質、動物性たんぱく質など、たんぱく質の種類によって、その組成や働き、消化吸収にかかる時間などが異なります。それぞれの違いや特長を正しく知ることが、たんぱく質を上手に摂取する第一歩です。
調査対象:首都圏にお住まいの20代~50代の女性 600 名
「たんぱく質に関する実態調査(2019) 」キューサイ
筋肉の合成を高めるには、体内でのアミノ酸の濃度をできるだけ一定に保つことが大切です。
研究によると、乳たんぱくのホエイは、摂取後に急速に体内に吸収されて血中アミノ酸濃度を一気に高めますが、その持続時間は短く、失速も早いのが難点です。一方、乳たんぱくのカゼインや大豆たんぱくのソイは、摂取後の血中濃度はホエイほど高くありませんが、ゆっくりと吸収されることでアミノ酸濃度を長時間維持します。つまり、たんぱく質の種類によって吸収速度が異なるというわけです。
さらに別の研究で、ホエイは主に筋肉の合成を活性化し、一方、ソイは筋肉の分解を抑制することが明らかになっています。
こういったことから、効率的な筋たんぱく質合成の手段の一つとして、複数のたんぱく質を組み合わせて摂ることが有効といえるでしょう。
Jason E.Tang et al.(2009).J Appl Physiol.
たんぱく質は食品ごとにアミノ酸の組成や吸収率などが異なります。その評価基準として広く知られるのが必須アミノ酸のバランスを評価する「アミノ酸スコア」です。100に近いほど良質なたんぱく源とされます。もう一つ近年注目されている評価基準が、必須アミノ酸の消化・利用効率を総合的に判断することが可能な「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」です。
この評価基準で評価すると動物性たんぱく質の効率の良さが認められますが、動物性だけを摂っていれば良いというものでもありません。牛や豚の赤身肉からのたんぱく質摂取が多いと糖尿病のリスクが上昇するとの報告※1がある一方、植物性たんぱく質の摂取量が多いと心血管疾患リスクが低くなるという研究結果※2も出ています。また、肉類は脂質が多く含まれる場合も多いので、一部を大豆たんぱく質に置き換えれば肥満防止にもつながるでしょう。こういったことから、たんぱく質は植物性も動物性も、バランス良く摂取するのが良いといえます。
Duke NUS Medical School.(2017). ScienceDaily. ScienceDaily.
Kurihara.A . et al.(2018).Journal of atherosclerosis and thrombosis
植物性たんぱく質 | 動物性たんぱく質 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
大豆 | とうもろこし | 牛肉 | 豚肉 | 鶏肉 | 牛乳 | 卵 | |
アミノ酸スコア | 100 | 69 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
DIAAS | 99.6 | 42.4 | 111.6 | 113.9 | 108.2 | 115.9 | 116.4 |
「アミノ酸スコアブック」Luvtelli
Tryon Wickersham et al.Protein Supplementation of Beef Cattle to Meet Human Protein Requirements
アミノ酸スコアが評価する必須アミノ酸9種のバランスは、必須アミノ酸1つ1つを桶板に見立てた「桶の理論」で説明されることがよくあります。
桶の水は桶板の最も低い高さまでしか溜まりません。
同様に必須アミノ酸も分量が少ない1種類に合わせて他の8種類が活用されるため、それ以上の量があっても排出されてしまいます。