朝はよく見えていたのに夕方になるとなんだか物が見えにくくなっていると感じることはありませんか?「仕事を終えてパソコンを閉じると遠くがかすんでいる」、「夕方になると目がしょぼしょぼする」などは若い頃でも感じる症状です。しかし、年齢を重ね、以前よりもそれが顕著になってきたという人も多いのではないでしょうか。日照時間が短いこの季節は、夜間の歩行や運転などにも支障をきたします。今回は、以前よりも見えにくくなる原因やセルフケア方法、医師に相談するタイミングなどを、眼科医の佐藤香先生にお伺いしました。

年齢を重ねると夜間に目が見えにくくなる理由。若い頃との違いとは?

明るいところから暗いところに入ったり、部屋の電気が消えて急に真っ暗になったりすると、しばらく何も見えなくなりますが、時間が経つにつれて暗さに目が慣れ、次第に周りが見えるようになることを「暗順応」と呼びます。ところが、時間が経っても暗いところではよく見えないままになってしまう症状があり、「夜盲症」(一般的には鳥目)と呼ばれています。

年齢を重ねると「虹彩」という光の量を調整する器官の機能の低下により光を感じる力が弱くなり、虹彩の働きが老化すると「暗順応」の機能も低下するため注意が必要です。若い頃と比べて、年齢を重ねると暗いところで目が慣れるまでの時間がかかるのは、上記の機能の低下によるものだといわれています。

そのほか、見えにくさに関しては加齢による白内障が要因の場合もあります。白内障は目の中の「水晶体」というレンズが濁ってくる病気ですが、これは加齢が主な要因で誰もがなる可能性があります。水晶体が濁ると光がきちんと目に入らないため、見えにくさに支障をきたしてしまいます。

目の構造を示したイラスト

夜間の見えにくさの対策について

夜間の見えにくさには、前段で述べたように年齢を重ねたことによる「虹彩」の機能の低下が関わっているため、若い頃とまったく同じ状態に戻すことは難しいと言えます。しかし、日頃から意識をすることで、見えにくさが緩和することもあります。

目の疲れと見えにくさ

疲れ目は夜間の見えにくさの大きな要因となります。日中、自身の視力に合っていない眼鏡やコンタクトレンズの使用で目が疲れてしまうことで、夜間に見えにくさが発生する可能性があります。目の疲れには、ビタミンB配合の目薬を使用することがおすすめです。

また、視力に合っていない眼鏡やコンタクトレンズは目を疲れさせます。視力検査を定期的に受けて自身にぴったり合う眼鏡やコンタクトレンズを使用しましょう。

目を抑える女性の写真

夜間の運転中にできる対策

また、自動車などの運転をする場合、夜間運転が多い方は「運転専用の遠近両用メガネ」を作ることがオススメです。遠くの道路標識と近くのダッシュボード(速度計、ナビなど)を1つのメガネで確認できることや、メガネの掛け替えによる一時的な「見えない時間」を回避することができます。

意識したい食生活や家でできるセルフケアについて

食生活では意識してビタミンAを取ることがおすすめです。ビタミンBと同様に、ビタミンAは視覚の働きに欠かせない栄養素であり、特に暗所での視覚を支える「ロドプシン」という視物質の構成成分として重要な役割を果たしています。ビタミンAはレバー、卵黄、乳製品、緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など)はビタミンAやその前駆体であるβカロテンを多く含んでいます。

ビタミンAを多く含んだ食材が並んだ写真

また、目が疲れたと感じた場合は、目のツボを押すこともおすすめです。こめかみのくぼみの太陽(たいよう)というツボは頭痛、めまい、目の充血などに効果があるといわれています。目の周りは皮膚が薄く非常にデリケートな場所です。朝晩のお肌のお手入れの際にクリームや美容液を塗りながら優しく押しましょう。

様々な目のツボを示したイラスト

見えにくさと病気について

夜間の見えにくさに関して「ただの疲れ目だから問題ない」と思っている人は意外に多いのですが、目の病気を併発していることも多いので注意が必要です。夜盲症、白内障などが発症している場合や、網膜の視細胞に異常が現れる網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)の初期症状は夜盲症が見られます。40代からは、いろいろな目の病気のリスクもあるので、定期的に検査を受けるようにしましょう。状態として「数カ月前に比べてグンと見えにくくなった」と感じる方は特に注意が必要です。

まとめ

夜間の見えにくさは加齢による「虹彩」の機能低下による「暗順応」が対応できなくなることが原因です。加齢に伴う機能の低下は完全には防げませんが、日常生活や食習慣などのセルフケアで症状が緩和することもあります。夜間の見えにくさが数か月前よりもグンと悪化したと感じた場合は眼科に相談するなど意識をして生活しましょう。

text: Yuki Abe

【監修】

医師

佐藤 香(さとう・かおり)

集中力を要する緻密な作業を得意とし、年間3,000件以上の手術を行う日本でも珍しいボリュームサージャン(眼科手術医)。 とくに最先端の多焦点眼内レンズの豊富な知識を駆使して行う白内障手術において、抜群の治療実績を誇る。2023年には世界で初めての眼内レンズを使用した白内障手術も成功させた。最近では日本のみならず、海外へ活躍の場を拡げ、手術の執刀や指導、講演活動なども豊富に行っている。
まぶたの手術やボトックス注射 など、女性眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力し、美容と健康を両立させた治療も展開している。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など様々なメディアに取り上げられている。SNSの活動ではInstagramや公式 YouTube チャンネル「佐藤香/医師【眼科・サージャン】」でも豊富な最新情報を発信し、積極的に眼疾患に対して啓蒙活動を行っている。