年末年始のイベントがひと段落したものの、胃もたれが続いていたり、「なんだか年々、胃もたれしやすくなってきた」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『胃の中のものがずっと消化しない感じがする』・『酸っぱいものがこみ上げる』・『お腹が張る』などの不調は、実は男女ともに更年期の症状として生じることもあります。今回は消化器内科医の今津嘉宏先生に、40代からの「胃もたれ」の原因とすぐできる対策についてうかがいました。

胃はセルフチェックしやすい臓器

加齢による消化力の不調は、20~30代のころより弱くなった“気がする”だけではなく、さまざまな臨床研究で生理学的にも「実証」されています。内臓のなかでも胃は、不調を自覚しやすい臓器といえます。

胃もたれってどんな症状?

胃もたれの代表的な症状

胃が張る感じ、膨満感がある

胃酸が上がってくる

胃の鈍痛、不快感がある

吐き気があることがある

以上のようなことが当てはまる場合は、胃がもたれている状態と言えそうです。

胃の状態は「舌」を見て

舌の状態のイラスト

※イラストはイメージです

加齢で「胃」のエイジングも進む?

なぜ40代以降から胃もたれしやすくなるのか。原因はさまざまですが、男女ともに加齢によるホルモンバランスの変化も大きいと言えます。

男性・女性ホルモンの推移のグラフ

(※引用元:男女共同参画白書 平成30年版資料より)

女性ホルモンの分泌低下

女性ホルモン(エストロゲン)は、40代から50代にかけて大きく減少していきます。この″急激な減少“に体がついていけず、あちこちにさまざまな不調、いわゆる更年期症状が現れやすくなります。エストロゲンの減少と関係が深い症状として、ホットフラッシュ、全身の乾燥などが挙げられますが、実は「消化機能の低下」も関係しています。

エストロゲンが減少すると……

☑ 唾液の量・質が低下する
唾液量が減り、唾液の質(消化力、殺菌力)が低下すると、食物があまり消化されないまま胃に運ばれます。すると胃に負担がかかり、消化不良や、食道への逆流が起こりやすくなります。

☑ 自律神経のバランスが乱れる
胃の働きは、副交感神経がコントロールしています。エストロゲンの減少で自律神経のバランスが乱れることで、胃の運動機能が低下し消化吸収力が落ちていきます。

男性ホルモンの分泌低下

いっぽう、男性ホルモン(テストステロン)は20歳前後をピークに、加齢とともに少しずつ減少していきます。テストステロンには、全身の筋肉量や代謝を維持する働きがあり、減少することで胃の消化吸収力も低下。胃に内容物が留まる時間が長くなるため、不快感や痛み・不調が出やすくなるのです。

男性も女性も、年齢を重ねるとホルモンの分泌量が低下して、それに伴う肉体的・精神的な症状が出てくるなかの一環に、胃の働きが低下すると言えるでしょう。

胃もたれのしくみ(概念図)

胃もたれの仕組みの図

日常生活でできる胃もたれ対策5選

消化力が低下してきたと感じたら「冷たいものを避け、よく噛んでゆっくり食べ、腹八分目でごちそうさまが一番」―――これは医学的にも理にかなった、消化機能のセルフケアです。基本の生活習慣を見直すことは、即効性も期待できる対策法です。

胃の「温度」を上げる

実は、胃の「温度」を上げることで、消化吸収機能の改善につながります。日常生活での注意出来るポイントは下記のとおりです。

☑ 起床時
24時間で最も体温が低いのが起床時。体温よりも温かい水分を補給して胃を温めましょう。

☑ 毎食前
先に温かいものから食べることを習慣にしましょう。会食や飲み会なども、開始15分前に温かい水分を入れて胃を温めてみてください。自然と暴飲暴食も抑えられ、翌日の調子も変わってくるでしょう。

☑ 入浴
胃は内臓なので、全身の循環血液量を増やすことで深部体温が上がります。理想は42℃以下で5分間の全身入浴。血液は約1分間で全身を循環するので、足湯や手湯を1分間するだけでも有効です。

☑ 筋肉運動
筋肉を動かす運動は、深部体温を上昇させます。また、筋肉を動かすことは性ホルモン(エストロゲン・テストステロン)の分泌・産生にもつながります。スクワットなど簡単で気軽な筋トレを習慣にしましょう。

睡眠を見直す

よく眠れていないと、食欲の増進につながるため、食べ過ぎによる消化不良が起こりやすくなります。睡眠は長さではなく「質」が大切。良質な睡眠は、起床時に熟睡感があるかどうかで判断できます。

ぐっすり眠るためのコツはふたつです。ひとつは、きちんと起きること。日光を浴びて、温かい朝ごはんを食べ、歩行や家事などで軽くリズミカルな運動を行うと、睡眠ホルモンである「セロトニン」が分泌されやすくなります。

もうひとつは、就寝前に体温を上げること。人間は体温が下がるときに眠くなるため、就寝時間の30~60分前に入浴、ストレッチ、温かい水分などで体温を上げておくことで自然と入眠スイッチが入りやすくなるのです。

まとめ

(Text:Tamae Seto)

【監修】

今津嘉宏先生のプロフィール画像

芝大門いまづクリニック院長

今津嘉宏(いまづよしひろ)先生

日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構認定医ほか。 著書に『健康保険が使える漢方薬の事典』今津嘉宏著(つちや書店)『病気知らずの名医が食べている 長生き朝ごはん』今津嘉宏・今津美幸著(ワニブックス)ほか多数