「かゆい」「赤い」「ヒリヒリする」などフェムゾーン(デリケートゾーン)の不調は、多くの女性が折に触れて悩まされてきました。さらに「ニオう?」「乾燥している?」「性交痛がある」など「40代になって、少し変化してきたかも……?」と感じている人もいるのではないでしょうか。
実は、女性ホルモンの分泌が低下し始めるエイジングを重ねた更年期のころから、フェムゾーン(デリケートゾーン)の皮膚と粘膜は「乾燥」しやすくなっていきます。更年期特有の不調は、閉経後に徐々に治まっていくことがほとんどですが、フェムゾーン(デリケートゾーン)は閉経後にも「乾燥」が進んでいくため、エイジング世代には、スキンケアと同じような、毎日のケアが必須になります。“デリケートゾーン”と言うと、繊細で触ってはいけないところ、というイメージがあるかもしれません。しかし“フェムゾーン”(腟と外陰)は、病気がなければ健康で丈夫なところ。ほかの部位と同じように、自分で見て触ってケアをしたい部位です。今回はフェムゾーンの正しいセルフケア方法を泌尿器科医の関口由紀先生に聞きました。

そもそも私はいま、更年期?

更年期とは、閉経の前後5年の計10年間を指す期間です。個人差はありますが、今の40~50代の女性は更年期にあたる人が多いでしょう。更年期はどういう時期かというと、20~30代がピークだった女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が、閉経に向けて、不規則にアップダウンを繰り返しながら低下していく時期。ホルモンバランスが乱れることで月経に変化があったり、急に大汗が出たり、イライラしたり……と、心身に不調が出やすくなります。

エストロゲン量の波線グラフ
※イメージ

フェムゾーンと女性ホルモンの関係

女性ホルモンの主役である「エストロゲン」は、女性のカラダに大きな影響を与えます。妊娠や出産のためだけでなく、脳や骨、血管などの機能にも作用し、皮膚と粘膜(目・鼻・口腔・腟)のコラーゲン産生を促して、水分量を保つという大切な働きがあります。エストロゲンが低下していくことは、すなわち、皮膚と粘膜の水分量が低下していくということで、更年期から閉経後、年齢を重ねていくほど、全身の皮膚と粘膜が乾燥しやすい状態になります。フェムゾーンは、女性ホルモン低下の影響を特に強く受けやすいうえに、膣内や腟口周辺は粘膜なので、特に乾燥による影響を受けやすいところなのです。

フェムゾーンが乾燥すると、どうなるの?

例えば、顔が乾燥するとバリア力が低下して、かゆみや湿疹、痛みを起こしやすい状態になります。

フェムゾーンも、顔と同様に刺激が多いところなので、トラブルがあると乾燥しやすくなり、このような変化が起こることがあります。

【エイジングサイン】こんな不調はありませんか?

  • むずむずとした違和感、かゆみがある
  • 排尿後、ついゴシゴシと拭きたくなる
  • おりものが減ってきた
  • 不快なニオイがある
  • ヒリヒリとした灼熱感がある
  • 赤く炎症を起こしている
  • 性交時の不快感や痛み、出血がある
  • 外陰部の皮膚がシワシワでたるむ
  • 色素沈着が起こりやすくなる
  • 頻尿・尿モレ・膀胱炎を起こすようになった

フェムゾーンと尿路のトラブル

実は上記の不調は、GSM(閉経関連尿路性器症候群)の兆候としてみられる症状です。GSMとは、閉経によるエストロゲンの低下から生じる、フェムゾーンと尿路のトラブルのことで、程度の差はあるものの、50代以降の女性の2人に1人がGSMを経験していると言われ、膣や外陰部だけではなく、排尿トラブル、再発性膀胱炎なども起こりやすくなります。日常生活に支障が出るほど進行すれば、婦人科や女性泌尿器科での治療が必要になります。

乾燥させない!毎日のフェムゾーンケア

起因はエストロゲン低下による乾燥なので、乾燥しがちな粘膜には「保湿」が大切です。今までエストロゲンがしてくれていた保湿を、これからは自分でするだけなので、スキンケアと同じように、毎日の習慣にしましょう。

その①:フェムゾーンの洗い方

乾燥させずに、ニオイやかゆみのもととなる汚れだけを落とす洗いかたのコツは2つあります。

1:洗浄力の強いものを避けること。弱酸性のものや、専用の洗浄料を使うことがオススメです。

2:こすり洗いではなく、指の腹で、アンダーヘアやひだをそっとかき分けるように汚れを落とします。腟の中まで洗う必要はありません。

その②:フェムゾーンの保湿法

洗ったあと、保湿剤をクリトリス→尿道口→腟口周辺→小陰唇→大陰唇、と塗っていきましょう。肌に優しいボディ用のもの、専用の保湿剤もさまざまです。粘膜部分を触ることに抵抗感がある人もいるかもしれませんが、シンプルに「粘膜ケア」と考えてください。口腔内を歯みがきでケアすることも「粘膜ケア」のひとつなので、同じ粘膜ととらえ優しく保湿しましょう。

フェムゾーンのイラスト
(参照)「私の生理のしまい方」(関口由紀監修/KADOKAWA/2023)P177イラスト

その③:ショーツのサイズや素材をチェック

乾燥しやすくなってくると、ショーツのこすれや締めつけ、通気性の悪さなどが、かゆみやヒリヒリ感、色素沈着などにつながることもあります。通気性、吸湿性に優れた天然素材で、下腹部全体が包み込まれるようなサイズ感のものを選びましょう。

ショーツのチェックポイント

  • ショーツから肉がはみ出していないか
  • ショーツを脱ぐと肌に跡ができていないか
  • ショーツと肌にすき間があってゆるゆるしていないか

その④:日々の生活にちょっとプラス

乾燥対策としては、適量の水分補給も大切です。毎日のトイレでもひと工夫。排尿のときは温水洗浄機能を使わず、尿道まわりの汚れをペーパーに吸い込ませるようにそっと押しあてるだけでOKです。セルフを含めた性生活も、粘液の分泌を促進し、粘膜の弾力を保つのに役立ちます。

まとめ

フェムゾーンは、ケアを続けることで乾燥を防ぎ、ふっくら潤った状態をキープすることができます。1カ月続けても違和感があったり、日常生活に支障が出ていたりする場合は、婦人科や女性泌尿器科などの医療機関に相談してみましょう。

Text:Tamae Seto

【監修】

関口由紀さんの宣材写真

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長

関口 由紀(せきぐち ゆき)

医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本女性骨盤底医学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医。人生100歳時代の日本の中高年女性の骨盤底・血管・骨・筋肉の総合的な維持管理を提唱し、生涯にわたるヘルスケアを実践している。横浜市立大学院医学部泌尿器病態学講座客員教授、女性のためのインターネットサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。