キューサイ株式会社(社長:藤野 孝、本社:福岡市)は、静岡県立大学(山田 静雄 薬学部教授、グローバルCOE事業推進担当者)と、ノコギリヤシの排尿障害に対する効果の確認(臨床試験)を行いました。その結果、ノコギリヤシ果実抽出液が前立腺肥大症患者の残尿量を減少させることを確認しました。
この研究結果は、9月12日「第15回 日本排尿機能学会」(会長:本間之夫東京大学医学部教授、会場:大手町サンケイプラザ、http://nbs15.umin.jp/)にて以下2演題について発表しました。
1)「ノコギリヤシは前立腺肥大症に効果があるのか
~α遮断薬に追加した排尿パラメーターの推移について~」
2)「ノコギリヤシ果実抽出液投与患者における各種バイオマーカーの変動について」
静岡県立大学(山田 静雄 薬学部教授)は2004年よりノコギリヤシの排尿障害に対する研究を行い、ノコギリヤシの排尿障害に対する学会発表を計9回、論文掲載を4回、有しています。
2004年
日本薬学会第124年会にて学会発表
第92回日本泌尿器科学会総会・第25回日本臨床薬理学会年会にて学会発表
2005年
日本薬学会第125年会・第93回日本泌尿器科学会総会にて学会発表
また、Journal of Urology・日本排尿機能学会誌にて論文掲載
2006年
第60回日本栄養・食糧学会にて学会発表
2007年
第94回日本泌尿器科学会総会・第14回日本排尿機能学会にて学会発表
日本補完代替医療学会誌・Urology にて論文掲載
同年 キューサイと共同研究を開始
2008年
日本薬学会第128年会にて学会発表
以上
ヤシ科シュロ属のノコギリヤシの果実エキスは欧州において前立腺肥大症治療薬として使用されています。日本においても健康食品として幅広く利用されていますが、これまで日本人で効果を検証した試験を公表しているケースは少ない。そこで、日本人における前立腺肥大による排尿障害に対するノコギリヤシ果実抽出液の効果の検証を行いました。
すでに前立腺肥大症と診断され、医薬品(α遮断薬)を平均 3 年以上服用して排尿状態が落ち着いている10名を対象とし、毎日ノコギリヤシ果実抽出液を含有するカプセルを2粒(ノコギリヤシ果実抽出液320mg)4週間飲用し、飲用前後の排尿パラメーターを比較検討しました。
*泌尿器科 しお医院(静岡市;院長 影山 慎二先生)にて実施
下のグラフは患者10名の残尿量についてノコギリヤシ果実抽出液の飲用前と飲用後を比較したものです。
ノコギリヤシ果実抽出液を飲用することにより、残尿量が有意に減少し正常値に近づきました。また、ノコギリヤシ果実抽出液の4週間の飲用により10人中7人が飲用前より改善したと答えました。
ノコギリヤシ果実抽出液を飲用することにより、前立腺肥大症患者の残尿量を有意に減少させることができました。また、残尿量の減少に伴い、尿の勢いを表す最大尿流率の増加傾向や前立腺肥大症による排尿障害の指数を表すIPSSの減少傾向が確認できました。
私達は、動物実験から、ノコギリヤシ果実抽出液が排尿障害の改善作用を示すことを明らかにしました。今回、日本人の前立腺肥大症患者で、医薬品と併用した場合に上乗せ効果があることが示されました。今後、症例数を増やすことや、作用メカニズムを明らかにすることにより、ノコギリヤシ果実抽出液の排尿障害における有用性をより明確にできると考えています。
今までは、患者さんから健康食品の効果について質問されても、良いのかどうか答えられませんでした。今回の結果から、症状の改善に満足されていない前立腺肥大症のある方には、追加で内服しても良いと答えることができると思います。今後は、ノコギリヤシがどのような排尿状態の方に、より効果が得られやすいかについても研究する必要があると思われます。
用語解説