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キューサイと静岡県立大学が共同研究「ノコギリヤシの成分について」

キューサイ株式会社(社長:藤野 孝、本社:福岡市)は、静岡県立大学(山田 静雄 薬学部教授、グローバルCOE事業推進担当者)と、ノコギリヤシ果実エキスの排尿障害を改善する有効成分を解明しました。
この研究結果は、9月12日「第16回 日本排尿機能学会」(会長:内藤 誠二 九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野、会場:JALリゾートシーホークホテル福岡、URL:http://www.congre.co.jp/nbs16/)にて以下1演題について発表します。

演題:ノコギリヤシ果実エキスの薬理活性成分に関する研究

静岡県立大学 山田教授の研究発表

静岡県立大学(山田 静雄 薬学部教授)は 2004 年よりノコギリヤシの排尿障害に対する研究を行い、ノコギリヤシの排尿障害に対する学会発表を計11回、論文掲載を 5回、有しています。

2004年
日本薬学会第 124 年会にて学会発表
第92回日本泌尿器科学会総会・第 25 回日本臨床薬理学会年会にて学会発表
2005年
日本薬学会第125年会・第93回日本泌尿器科学会総会にて学会発表
また、Journal of Urology・日本排尿機能学会誌にて論文掲載
2006年
第60回日本栄養・食糧学会にて学会発表
2007年
第94回日本泌尿器科学会総会・第 14 回日本排尿機能学会にて学会発表
日本補完代替医療学会誌・Urology view にて論文掲載
同年 キューサイと共同研究を開始
2008年
日本薬学会第 128 年会にて学会発表
第15回 日本排尿機能学会にて学会発表
2009年
ANALYTICAL SCIENCES(日本分析化学会発行:分析化学 第25巻)に論文掲載
Biological&Pharmaceutical Bulletin(社団法人日本薬学会発行:生物系薬学学術誌第32巻)に論文掲載
Acta Pharmacologica Sinica 30 巻に論文掲載

研究の背景

ヤシ科シュロ属のノコギリヤシ果実エキスは欧州において前立腺肥大症治療薬として使用されています。日本においても幅広く利用されていますが、これまで日本人で効果を検証した試験は実施されていません。そこで、日本人における前立腺肥大による排尿障害に対するノコギリヤシ果実エキスの効果を昨年実施しました。その結果、ノコギリヤシの果実エキス飲用により、前立腺肥大症患者の残尿量を有意に減少させることができました。また、残尿量の減少に伴い、尿の勢いを表す最大尿流率の増加傾向や前立腺肥大症による排尿障害の指数を表すIPSSの減少傾向が確認できました。

研究の目的

臨床試験の結果、ノコギリヤシ果実エキスによる排尿障害の改善が確認できましたので、その有効成分の同定とメカニズムを解明しました。

研究の方法

有効成分を同定するため、ラットの細胞を用いてノコギリヤシ果実エキスの活性成分の分画化を行いました。 分画化により、排尿に関するホルモンが受容体に結合することを抑制する成分を特定しました。

研究の結果

α1アドレナリン受容体とムスカリン性受容体に排尿に関するホルモンが結合することを抑制する効果が高い成分を逆相クロマトグラフィーにより特定しました。

研究のまとめ

ノコギリヤシ果実エキスの排尿障害を改善する成分がオレイン酸・ラウリン酸・ミリスチン酸・リノール酸・パルミチン酸であると解明しました。また、その成分が膀胱と前立腺の筋肉に存在する受容体に結合することにより、異常な収縮を抑え、排尿障害を改善することが分かりました。

静岡県立大学 山田 静雄 教授のコメント

私達は、これまでの研究において、ノコギリヤシ果実エキスが排尿障害の改善作用、下部尿路系受容体結合活性や5α還元酵素阻害活性を示すことを明らかにしました。今回は、その有機溶媒抽出物をカラムクロマトグラフィにより精製し、各分画について薬理活性を基に活性成分の同定を試みました。その結果、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸およびパルミチン酸などの遊離脂肪酸が活性の本体であることを明らかしました。特に、オレイン酸はノコギリヤシ果実エキス中での含有率と薬理活性が共に高かったことから、薬理作用の発現に大きく寄与することが考えられました。また、市販のオレイン酸とラウリル酸の標準品でも、ノコギリヤシ果実エキスから精製した天然品と同等の活性が見られました。
更に、ノコギリヤシ果実エキスにおいては、一定の割合で混合している各遊離脂肪酸が相乗的に作用していることを裏付ける結果も得ています。このように、植物エキスにおいては、各活性成分がシナジー効果を発揮することが予想され、今後、それらの機能性を考えるうえで興味深い知見と思っています。

用語解説

分画化
有効成分を同定する方法で、分離と評価を繰り返し、単一成分を特定する方法。
α1アドレナリン受容体
前立腺や尿道に存在する受容体の1つで、前立腺や尿道の筋肉を収縮させ、蓄尿を促す。
ムスカリン性受容体
膀胱に存在する受容体の1つで、膀胱を収縮させ排尿を促す。
1,4-DHP Ca 拮抗薬受容体
膀胱に存在する受容体の1つで細胞外から Ca イオンを取り込み、膀胱を収縮させ排尿を促す。
オレイン酸・ラウリン酸・ミリスチン酸・リノール酸・パルミチン酸
脂肪酸の一種。特に植物性油に多く含まれる成分。
下部尿路系受容体
膀胱や前立腺などに存在する受容体の総称で、これらの受容体に特異的に結合することで排尿障害を改善する作用がある。
5α還元酵素
前立腺細胞を増殖させ前立腺を肥大させる原因物質で、その酵素を阻害することで前立腺の肥大を抑制する作用がある。
カラムクロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィー
様々な物質の中から目的成分の性質により分離精製する方法。

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